── 山本先生は京都大学消化管外科のご所属です。大学医局の若手医師からは「激務」「裁量権がない」という声を聞くこともありますが、先生の研修医時代はいかがでしたか?
山本先生
私はキャリアの初期により多くの手術症例を経験しておきたいと思い、あえて研修先に忙しい病院を選びました。
実際、日中も夜間も毎日のように手術があり、激務でしたね。しかし自ら望んだ環境だったので、ストレスを感じることは少なかった気がします。得られるものがたくさんありましたし、若手の意見や要望を聞いていただける環境で、ある程度の裁量権を持たせていただけたのも、ありがたかったです。
── 裁量権があるのとないのとでは、忙しさの感じ方が変わりそうです。
その通りです。たとえばある後輩は、勤務先の関連病院では一番下で雑務も多いそうですが、「ほとんどの手術を任せてもらえるのですごく充実している」と言っています。一方で、「後輩が入ってこないからいつまでたっても下っ端でつらい」といった先生の話も聞きます。
── 確かに同じ職場環境や働き方でも、楽しいと感じる方もいれば、苦しくて悩む方もいらっしゃいます。価値観や体力も人それぞれですしね。
職場環境や人間関係の悩みから、自分が「外科に向いていない」「合わない」と思ってしまう方も少なくないのが現状です。こういうケースは決して「(外科に)向いていない」のではなく、その先生にとって今の環境が、力を発揮しづらい場所なのではないかと思います。
実際に、「働く環境や人間関係が変わって、つらかった外科の仕事が急に楽しくなった」という後輩の先生をたくさん見てきました。困ったときは、ぜひ私に相談してほしいといつも思っています。
── 転職や異動でがらりと変わるのは、どの施設、診療科でもありますね。先生の医局はいかがですか?
ありがたいことに、私が所属する京都大学消化管外科の医局は一人ひとりの希望や特性を尊重した働き方を大事にする風土があります。
「自分のやりたい仕事内容と少し違う」「仕事の強度が自分に合っていない」といった場合も、親身になって相談にのってもらえるという安心感があります。関連病院が60以上あるので、異動によって解決できる悩みも多いように思いますね。
── うらやましい環境ですね。その一方で、「環境を変えたいけれども、難しい」「どうしたらいいかわからない」とお悩みの先生もいらっしゃると思います。そのときはぜひ、先輩の先生や民間医局に相談してみていただきたいです。お話しされるだけで、「気持ちがスッキリした」という先生もたくさんいらっしゃいます。