「悩んだら相談して」キャリアの選択肢は幾通りもある
─山本健人先生(外科医けいゆう)に聞く【後編】

公開日:2024/04/24

医師転職エージェントとの面談内容は?

現役・消化器外科医でベストセラー著書でもある山本 健人先生と、民間医局のエージェントが外科医の働き方の多様化に迫る対談。後編は、知られざる外科医の転職事情やアルバイト裏技をお届けします。

さらに今、悩みを抱えている若い先生方に山本先生がどうしても伝えたい思いとは?ぜひ、最後までご覧ください。

▶【前編】「外科の楽しさと苦しさ。働く場所をどう選ぶ」を読む

山本健人先生

医学研究所北野病院 消化器外科/腫瘍研究部
京都大学消化管外科客員研究員

山本 健人(やまもと・たけひと)

2010年京都大学医学部卒業。2010年神戸市立医療センター中央市民病院臨床研修医、2012年同外科、2015年田附興風会医学研究所北野病院消化器外科、2017年京都大学大学院医学研究科消化管外科学博士課程を経て、2021年から現職。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、累計1200万超のページビューを記録。X(旧Twitter)フォロワー数は10万人超。著書『すばらしい人体』『すばらしい医学』はシリーズ累計23万部超。資格に、外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、感染症専門医、がん治療認定医など。
ペンネームの「けいゆう」は、娘と息子の名前からとったもの。

民間医局エージェント安田

民間医局 キャリアコーディネートグループ
第3エリア エリアマネージャー

安田 幸司(やすだ・こうじ)

2009年、株式会社メディカル・プリンシプル社入社。関西・首都圏のエージェントとして、毎年100名以上の医師紹介・キャリアサポートを行ってきた。自治体・大学・市中病院における臨床研修医・専攻医の採用活動支援にも携わる。2020年9月に京都支社長就任。2023年11月より現職。

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知られていない、外科医の転職事情。他科からの転科もできる?

山本健人医師と民間医局エージェント安田の対談風景

山本先生
外科医のイメージが昔とちょっと変わってきた、選択肢もいろいろある、といった話をしてきました。転職市場も活発になっているのでしょうか?

民間医局エージェント安田
はい。民間の人材紹介会社を利用して転職できることが認知されて、以前よりも転職のハードルが低くなっていると感じます。

多くの医局や病院で働き方が多様化しています。今でも「医局を辞めたら二度と戻れない」とか、「関連病院のあるエリアでは働けない」といった話はゼロではありませんが、昔より減ってきているのではないでしょうか。

実際に退局する際も、「また縁があればいつでも大学に戻っておいで」と言ってくださる教授が増えてきたなと。転職のご相談をされる先生方からよく聞きます。

山本先生
外科系医師の転職は、どういった事例が多いのでしょう?

安田
30~40代の先生では「激務やオンコールなどのストレス軽減をしたい」「家族ができたことを機にQOLを高められる外科勤務がしたい」といった理由から、転職を希望されるケースですね。50~60代の先生であれば、外科を続ける方もいる一方で、体力の衰えを感じメスを置かれ、慢性期系の病院へ内科として転職をされる先生が多いです。

最近増えているのは、在宅医療への転職相談です。外科医としてがん治療やホスピスに関わっていくうちに在宅医療に興味をお持ちになったり、在宅医療では外科的処置も必要だったりするため、これまでの経験を活かせること。さらに超高齢化社会で、在宅医療の必要性や将来性が高くなっていることも影響しています。

山本先生
僕と同じ年代の友人にも、外科から訪問診療や緩和ケアに転科した先生がいます。

安田
他科から外科への転科は難しいと思いますが、実際はどうでしょうか?

山本先生
決して多くはないですが、可能です。私の後輩で内科系の診療科から外科に転科した先生が何人かいますよ。

手術とは、高い頂(いただき)を目指す山登りのようなもの

安田
一方、外科から外科ではなく、外科から他科にシフトチェンジするのは大きな決断です。山本先生は転科について、どうお考えですか?

山本先生
僕自身はキャリアの選択肢を幅広く持ちたいとずっと思っています。もし、自分が外科医として手術することに前向きになれなくなったら、その時は外科以外の道に進むことを選ぶでしょう。

僕にとって手術とは、高い頂(いただき)を目指して山を登っているようなものです。だからこそ登り続けたいですし、やればやるほど手術の奥深さ、技術を高めることの喜びを感じています。これは、今後もずっと続くだろうと思っています。

安田
おっしゃるように、手術に対するモチベーションがなくなった場合は転科もありだと思います。ただ、それ以外の理由であれば、もったいない感じもしますね。

山本先生
その通りです。手術することが大好きで外科を続けたいのに、オン・オフがなくてつらい、人間関係が上手くいっていない……。そうした理由で、外科以外の道をお考えになる先生も少なくないでしょう。

ですが、最近は選択肢が増えています。働く場所を変えることで、それらの問題が一気に解決し、大好きな手術を続けられる道がたくさんあることを伝えたいです。

安田
「働く場所を変えろと言ったって、そんな簡単じゃない」と思われる先生もいらっしゃるでしょう。まずは勤務先の上司や先輩、私どものような人材紹介会社のエージェントに相談していただければ、外科を続けられる道が見つかるかもしれません。

相談をきっかけに異動が叶い、悩みを解決された事例も多く聞いています。なかには教授に相談したら、他大学の教授と仲が良く、そのつながりで国内留学的に大学から大学へ転職された先生もいらっしゃいます。

よその医療機関の実態はわからない

山本健人医師

山本先生
転職の相談があると、どのように対応されるんですか?エージェントの方とお話しする機会がなかなかないので、気になります(笑)

安田
私は先生とお話しする際に、いきなり希望条件を伺うことは避けています。

山本先生
なるほど…。

安田
転職は先生の人生にとって大きな出来事ですし、転職が正解とは限りません。まずは、現在のご状況や、今後どうしていきたいのかを伺い、先生にとって何が幸せなのかを一緒に考えるようにしています。

考えた結果、転職が最良の選択であれば、ご希望に沿った転職先をご紹介します。そうでない場合は、転職を勧めないこともあります。

たとえば、今の勤務先で不満に感じていることが、実はほかの病院よりも恵まれているケースは、珍しくありません。よその医療機関の実態を知る機会は、そうそうないものです。

山本先生
確かに。

安田
民間医局は全国の医療機関と取引させていただいておりますので、大都市だけではなく地方であっても、Webだけではわからない情報をご案内できるのが強みです。

なかには求人情報ばかりを送っている人材紹介会社もあると聞きますが……。転職してから「こんなはずではなかった」と思われることがないように、先生の立場を第一に考えています。

山本先生
自分にとって何がベストなのかを一緒に考えてくれる人がいるというのは、キャリアに悩んでいる先生方にとって大きな救いだと思います。

安田
先生方が“気持ちを吐き出せる相手”になりたいと常に思っています。

また、「エージェントに相談すると、強引に転職させられるのでは?」という先生もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはございません。

強引に転職を勧めてしまうとミスマッチになりやすく、早期退職のリスクも高まります。先生はもちろん紹介先の医療機関にとってもマイナスで、当社は信頼を失ってしまう結果になるからです。先生、医療機関どちらにもプラスになるようにお手伝いすることが、私たちの務めだと思っています。

医局所属の先生におすすめのアルバイト活用方法

アルバイトの説明をする民間医局エージェント

山本先生
医局所属の先生方におすすめの、アルバイト活用法があれば教えてください。

安田
民間医局は「レジナビFair」を運営していることもあり、特に20~30代の若い先生がアルバイト探しで利用されています。

医局所属の先生方は、医局からの割り当てや先輩からの紹介などでアルバイトに行かれることが多いですが、「この日も空いているのでアルバイトがしたい」とか、「自院で経験できない領域に携わりたい」といった理由でお問い合わせいだたくこともあります。

また最近では、これまでになかったことですが、教授や医局長から「関連病院が減ってアルバイト先がなくなったので、うちの医局員に紹介してほしい」という依頼もあります。

山本先生
大学院時代にアルバイトをしていましたが、昔から医局と繋がっている病院に行くことが多かったです。

実は僕も、民間医局を利用してスポットのアルバイトをしたことがあります。勤務前に気になることがあっても、民間医局の方が間に入ってくれるので、アルバイト先と直接やりとりしなくていい分、気持ち的にも非常に楽でしたね。

安田
給与ですとか、言いづらいことを直接やりとりせずに済むのは、人材紹介会社を利用していただくメリットだと思います。

ほかにも、医局内の同期の方々がグループで利用されることも多いですね。「1、2週目は私と○○さんで、3、4週目は○○さんと○○さんで」という感じで利用されています。メリットは、急な用事や病気でアルバイトに行けなくなったときにグループ内で補填し合えることです。

山本先生
そういった活用の仕方もあるんですね!ほかに何か面白い活用方法はありますか?

安田
たとえば、旅行を兼ねて現地の医療機関でアルバイトをされる先生もいらっしゃいます。医師採用に困っている医療機関はそれで助けられている面もあり、上手に活用してくださる先生方がいることは、私どもも嬉しく思っています。

アルバイトはほかの病院を知ったり、気分転換ができたりとメリットもあります。そういった理由でも、民間医局を活用していただけたらと思います。

自分がこうなりたいではなく、周りから「こうあってほしい姿」を目指す

安田
山本先生は40代に突入されますが、今後のキャリアビジョンをどう描かれていますか?

山本先生
僕自身がこうなりたいというよりも、周りから見て「こうあってほしい姿」を目指しています。

先輩から見て、どういう部下であってほしいのか。後輩から見てどういった先輩でいてほしいのか。後輩がいずれ指導医の立場になったときに、「山本先生はこうやって教えてくれていたな」と思い出してもらえるような存在でありたい。

自分が組織の一員として、何を求められているのかを常に考えています。

安田
ふつうは「こうなりたい」と考えてしまうものですが、「周りからこうあってほしい姿」を目指すのですね。同年代の組織人として、感銘を受けました。

山本先生
ありがとうございます。

僕の最大の目標は、日本の医療を良くすることです。所属している京都大学という組織は、それに大きく貢献できると思っていますし、その組織に貢献することが、ひいては日本の医療を良くすることに繋がると考えています。

キャリアに迷ったら遠慮なく相談してほしい

山本健人医師と民間医局エージェント安田

安田
今まさにキャリアで悩まれている先生はたくさんいらっしゃると思います。そういった方々にメッセージをいただけますか。

山本先生
キャリアの選択や転職は、大きな分岐点になります。そうした決断をする際は、たくさん調べて、十分な知識を得てほしいです。

たとえば、「外科がつらいから転科しよう」となったときに、他科の実情はわからないことも多いでしょう。転科して本当に大丈夫かどうか調べたり、職場の先輩や医局の上司、エージェントなど、さまざまな人に相談するのが大切だと思います。

安田
「あのとき知っておけばよかった」とならないためにも、情報収集は大切です。

山本先生
僕自身、通ってきた道しかわかりません。外科医を理解しているつもりでも、それは自分の狭い世界の中だけかもしれなくて。

実は、道は幾通りもあります。だから今、つらい状況の先生方に選択肢はたくさんあるよ、と伝えたい。「外科をやめるしかない」と思っていたのが、さまざまな働き方の選択肢を知ることで、考え方が変わった後輩の先生もいますので。

安田
お一人で考え込んでしまわずに、客観的な視点を取り入れるため周りの方に相談されるのも良いですよね。それこそ、山本先生に相談したい先生もたくさんいらっしゃると思います。

山本先生
大歓迎です!誰かに相談するにしても、医局内やグループの上司となると言いづらいこともあるでしょう。それに、得られる情報が限られてしまうかもしれません。

安田
同じ医局だから相談しづらい、という点はあるでしょうね。

山本先生
僕でよければ、遠慮なく相談してほしいです。外科でも、外科以外でも!関西に限らず全国どの地域、どんな病院のことでも構いません。

安田
それは心強いですね!

山本先生
民間医局さんともお互いの強みを活かしながら、こうしたメッセージを発信し続けたいですね。一人でも多くの先生が外科医の仕事を心から楽しめて、充実したキャリアや医師人生を歩むことができたら嬉しいです。

▶【前編】「外科の楽しさと苦しさ。働く場所をどう選ぶ」を読む

※この対談は2024年3月に行いました。文中の所属・肩書等は対談当時のものです。

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外科医の視点

けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方

【民間医局コネクト×レジナビFair×外科医けいゆう】コラボ企画!

特別講演「けいゆう先生と考える!後悔しない診療科の選び方」

ファシリテーター:山本 健人先生(外科医けいゆう)

【大阪】2024年5月26(日) 14:00~15:00
インテックス大阪1・2号館

【東京】2024年6月16日(日) 14:00~15:00
東京ビッグサイト西1・2ホール

参加費:無料 定員:100名
対象:医学部6年生・初期研修医

※民間医局コネクトサイトへ遷移します。

企画・編集:竹内 実夏(民間医局Web担当)

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