船元
民間医局にご登録いただいた当初は、産業医はお考えではなかったですよね。
藤並先生
登録時点では、異動までの間のアルバイトを探していましたからね。
ところが、予定していた夏の異動が先方の都合で立ち消えになってしまいました。臨床医に戻るか迷いもありましたが……。そのころには「自分が今、一番やりたいのは予防や生活習慣改善だ」ということがある程度見えていました。
私の父が産業医の仕事もしているのですが、異動がなくなったことを話すと、「役に立つから、産業医資格を取っておけば」と勧められました。よく考えてみると、産業医学の分野はまさしく自分が考えていた一次予防に繋がります。それに、社会で働く方たちの健康推進にも役立てるのではないかと思いました。
それから大急ぎで動きました。各地で開催される研修会に手当たり次第に申し込み、2ヶ月ほどで全ての単位を取ることができました。
船元
数ヶ月間のアルバイト経験やお父様のお言葉が、先生のキャリアプランに大きな変化をもたらしたのですね。
藤並先生
おっしゃるとおりです。臨床医を長年やってきて胸の奥に溜まっていた想いが、環境の変化で一気に形になりました。得難い経験です。
船元
そこで当社から、グリコ様を紹介させていただきました。グリコ様の第一印象を教えていただけますか?
藤並先生
民間医局のWebサイトに求人情報が掲載されていますよね。企業名は出ていないのですが、いくつも求人が並ぶなかで、ひときわ熱量の高い文章に惹かれました。「健康経営をしたい」「生活習慣病を何とかしたい」という熱い想いが感じられて、「ここに行きたいです」とエージェントの方にお願いしました。
船元
最初から第一候補でしたよね。グリコ様との面接は、いかがでしたか?
藤並先生
面接前に一度、業務内容や現状について詳しく伺う機会をいただきました。すると、想像以上に生活習慣病の社員が多く、がんや脳卒中の治療をされている社員も相当数おり、衝撃でした。これは確かに、何か手を打たなくてはいけないと。
私はそれまで動脈硬化の最終段階に至って脳卒中を発症した患者さんを多数診てきました。実際に脳卒中になった方を診てきた実感をもって業務にあたれば、説得力を持って社員の皆さんと接することができ、ひいては健康推進に寄与できるのではないか、と考えました。
面接自体は、今だから言えますが、緊張しました(笑)。医局人事でも面談することはありますが、企業の面接は全く違うなと感じました。
船元
企業の面接を受ける先生方は皆さん、同じようにおっしゃいます。
藤並先生
そうですよね。医局人事ですと落とされることはまずないという前提で面接を受けますが、企業の場合は、「この人は産業医として力を発揮できるのだろうか?」と厳しい目で見られる。
船元
背景にあるのが、年収額に対する感覚の違いです。臨床医にとって、たとえば年収1,200万円や1,500万円といった額は珍しくありません。ところが企業になると、役員クラスの年収に該当します。つまり産業医には、役員を担えるくらいの力量やお人柄が期待されます。
藤並先生
だから採用の過程でも、厳しい目線で見られるのですよね。