高品質だからこそ患者は早く回復する
宮木氏は、みるみるうちに力を付け、札幌医科大学心臓血管外科心臓チームでナンバー2の心臓外科医となっていた。2015年、樋上氏は神奈川県にある葉山ハートセンターの院長に就任する。
「まだまだ習い残したことがたくさんありました。もっと学びたい。そして自立したい。そんな思いで、樋上先生のいる病院に移りました」
葉山ハートセンターは心臓疾患の専門病院としての性格上、心臓弁の疾患に狭心症を合併しているような重篤な患者が全国からやってくる。
樋上氏の下で10年間学び、ほとんどの技術を身に付けたという宮木氏だが、恩師の手術にどの程度近づけたのか。
「60点といったところでしょうか。これからは私の実力次第です」
そう謙遜するが、同院で再開胸を含むほとんどの手術を担うまでになっている。
再開胸手術の剥離は癒着があるため通常であれば時間がかかる。宮木氏は胸腔に指を入れ、胸膜越しに胸骨を触りながら迷うことなく胸骨再切開し、最も癒着の少ない部位(横隔膜面)を正確に把握し、トラブルなく手術を進めることができるようになっていた。初回手術との差はわずか1時間ほどまで縮まっている。