患者の中に入った錯覚 これなら自分にも使える
ダヴィンチがにいむら病院に導入されたのは、先代の新村研二氏が理事長の時。1980年に開業以来30年以上もの間、ずっと手術指導を依頼している医師のアドバイスによるものだ。秦野直氏。日本にダヴィンチを導入した立役者である。現在は東京医科大学泌尿器科兼任教授で日本ロボット外科学会国際A級ライセンスの資格を持ち、全国でダヴィンチの指導を行う。
「先生は、ダヴィンチが保険に通る前から素晴らしい医療機器があるからと、父や私にぜひこの病院にも導入しようという話をされていました」
百聞は一見にしかず。新村氏は学会場で展示してあるダヴィンチの実物を見た。
「何てこんなにきれいに見えるのだろうって、最初は衝撃でした。血管が洋服のレースのようにきれいで。自分が小さくなって、患者さんの中に入っているような錯覚に陥りました。これなら自分にも使えると…」
術野への没入感は、高解像度三次元ハイビジョンシステムによるもので、10倍以上に拡大された、極めてリアルな3D立体映像を見ながら手術ができる。
2007年に臨床研修を終えた新村氏は、にいむら病院で勤務を始めたが、高額なため、個人病院への導入はそう簡単ではなかった。
2012年に前立腺全摘除術が保険適用になると、先代はその翌年にはダヴィンチの導入に踏み切り、それに合わせ新村氏もダヴィンチの認定ライセンスを取得した。
導入されると、新村氏は秦野氏から直々に手ほどきを受けて経験を積んでいく。民間病院だから絶対に事故は出せないと、特に慎重な操作を指導されたという。
「導入したタイプは、デュアルコンソールのボタン一つで術者を切り替えることができます。先生が右半分の手術、それに倣って私が左半分の手術を進めるような、非常にぜいたくな環境で学ぶことができました」