女性外科医が学べる場を提供 効率的にスキルアップ
こうした女性外科医の活躍を支援する活動を行っているのが、消化器外科医の河野恵美子氏である。東京大学の野村幸世氏、日本バプテスト病院の大越香江氏らと共に、2015年11月に消化器外科の女性医師を支援する団体「AEGIS-Women」を立ち上げ、同じ高槻赤十字病院で副院長を務める平松昌子氏に会長を依頼した。女性外科医がキャリアを継続させながら活躍の場を広げられるよう、さまざまな活動に取り組む。
その一つの活動が「キャリアアップ10ミニッツ・セミナー」。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本臨床外科学会の総会期間中に開催され、ライフイベントで時間的に制約がある女性医師が、短時間でスキルアップできるように10分間のワンポイントレッスンを提供する。
2018年1月には、世界で初めて託児所付きのアニマルラボを始めた。子育て中の女性医師が、技術向上のために泊まりがけでラボに参加できるよう託児所を設け、学びに集中できる環境を作った。単に子供を預けるだけでなく子供向けセミナーを開催するなど、母親の仕事を理解してもらう試みも充実。同じ環境の女性医師が交流できる場として需要は高く、来年度の開催も決定している。
さらに時間的・空間的な制約をクリアするため、腹腔鏡の手術手技を学ぶ新しいプログラムの開発にも挑戦。これまでは外科手術を学ぶためには、国内留学でエキスパート医師の指導を直接受けなければならなかったが、デジタルコンテンツを導入することで、短期間で効率よく手技を身に付けられるようになった。
次々と女性外科医をサポートする活動を提案し、実現させている河野氏。その原動力となっているのは、自身が女性外科医として苦悩した経験と、後輩医師たちとの出会いだった。