泉院長の下でラジオ波焼灼術を研鑽
2000年に消化器科へ入職後、肝臓疾患を得意とする周囲の医師たちから刺激を受け、肝臓専門医としての道を歩んできた。中でも最も強く影響を受けたのが、ラジオ波焼灼術(RFA)の第一人者である泉並木院長だ。同院の肝がんラジオ波治療は1500例以上に上り、全国でも毎年トップ10入りする実績を誇る。土谷氏は泉院長から直々に指導を受け、自身もラジオ波治療の技術を磨いてきた。
「C型肝炎に対する治療法は、新規抗ウイルス薬が登場したことによって大きく前進しました。これにより肝がんにまで進行する患者が減り、ラジオ波の手術件数自体は全国的にも減少傾向にあります。現在はラジオ波、肝動脈塞栓術(TAE)、化学法、リザーバー肝動注化学療法、放射線治療(定位照射)を組み合わせることで、トータルでの肝がん治療を行っています」
ラジオ波によって短期間の入院でがんを確実に死滅させることが可能になり、肝がんの5年生存率は70~80%にまで上昇した。高度に進行した肝がんに対しては、高精度放射線治療や分子標的治療薬による化学療法など、生活の質を保ちながら生存期間を延ばす治療を患者と相談しながら進めていく。肝がんに対する化学療法の進歩は著しく、新規分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬、あるいはこれらの組み合わせによる臨床治療の受託も多い。
「私が入職したころは、肝がんといえば抗がん剤が効かず、転移すれば非常に予後の悪い病気でした。現在はスクリーニングシステムが発達して早期発見が可能になったことや、治療装置・治療支援機器の改良によって治療成績は大きく向上し、予後も延びています」
肝がんは極めて高頻度で再発が起こり、治療方法はステージではなく肝機能に左右されるのが特徴だ。アルコール性肝障害や糖尿病などの合併症があるケース、非アルコール性脂肪肝炎から進行するケースなど原因はさまざまで、肝がんの治療のみならず生活スタイルも含めたコントロールが必要になる。
もともと「患者とじっくり向き合いたかった」という土谷氏は、10数年にわたる付き合いになることもある現在の診療にやりがいを感じている。
「肝がんの治療をすることは、すなわち肝臓の治療をすること。私たちの目標は、肝がんや肝硬変などの病気があっても、できるだけ健康な人と同じように生活を楽しめるようサポートすることです。可能な限り良い状態で予後を延ばしていけば、家族や友人と共に、その人らしい生活を続けることができます」