専門分野外にも目を向け常にヒントを探す
帰国後、開発の道に足を踏み入れた菅原氏が今でも大切にしているのは、"全てに疑問を持つ"こと。
「今やっている方法が本当に良いものなのか。そこから考え始めます。実際に脊椎固定術は、"これが本当にベストな方法なのか?"と疑問のあるものでした」
疑問を解決するためには「なるべく多くのものを見るようにしている」と菅原氏は言う。
「例えば、医療機器の展示会では自分の専門分野だけでなく、心臓や消化器の機器も見る。他業種の工業製品についてもアンテナを張るなど、さまざまな技術の最新情報を集めます。それまで自分の頭の中で考えていたものが、どんな技術があれば実現可能なのか。常に考えておくことが大切です」
菅原氏が脊椎インプラントを考案した当初は、職人に頼んで1組ずつ削り出していたため、作るのに一ヶ月かかり、コストも100万円を超えていた。一旦は諦めかけたが、チタンを加工できる3Dプリンターの存在を知ったことで、開発は大きく前進。加工はわずか1日でできるようになり、コストも大幅に圧縮された。
「開発の核となる技術は自分で考え、実証実験を繰り返してからメーカーに持ち込みます。インプラントカバーは数社に持ち込んで、次々に断られました。最後に残った1社だけが実用化に向け力を貸してくれました」
新規医療機器の開発に積極的だったアムテックが製造・販売を引き受け、2011年の構想から8年の月日をかけて実用化にこぎつけた。