医療の枠を超えた連携でチャレンジができる環境
久高島での診療は朝8時半に始まる。多いときで1日15人ほどの外来診療を行い、月に1、2回は訪問診療をしている。約200人の島民を、夫婦2人で診る体制だ。島でも高齢化は進んでいるが、全国から小学6年生~中学3年生までの学生を受け入れる「久高島留学センター」があり、比較的子どもの割合が高いのが久高島の特徴である。有路氏に島の子どもたちの人数を聞くと、
「保育園児が5人、幼稚園児が6人、小学生が15人、中学生が12人います」
と迷いのない答えが返ってきた。診療所では、風邪や発熱、ケガなどの日常診療に加えて、学校健診や予防接種まで島の医療を支える役割を幅広く担う。有路氏は、住民に向けた医療情報の発信にも積極的だ。赴任した直後から「診療所便り」を作成し、市民健康講座を開催しているほか、小学生への仕事と生き方に関する講座、中学生への学習支援も行っている。
「市役所、保健所、学校との連携など、医療の枠を超えて小さなチャレンジが多くできるのが魅力で、やりがいを感じています」
地域に向けた取り組みとして、有路氏が力を入れているのが、高齢者への介護やリハビリテーション導入の呼び掛けである。
「介護サービスを受けられることを知らない人も多く、訪問リハビリもあまり浸透していなかったので、私が橋渡しをしています」
島での診療は、常に誰かに教えてもらえるような環境ではない。スキルアップのためにどんな努力をしているのだろうか。
「2カ月に1回は整形外科と眼科の先生が巡回診療に来てくださるので、直接手技を教えてもらっています。COVID-19でオンラインによるセミナーや勉強会が増えたのも、私にとってはプラスでした」
そうした学ぶ機会がある一方で、どうしても知識や技術のアップデートに関しては後れをとってしまうデメリットもある。だからこそ、数年ごとに人が入れ替わる沖縄の離島診療は、ベストな仕組みだと有路氏はいう。