C医師の過失を認めず
上告人の主張に対し、概ね下記のとおり過失がない旨判示して、請求を棄却した。
(1) 第3世代セフェム系エポセリンやスルペラゾンの投与について
・上告人側の鑑定意見書や意見書に「時には経験的に抗生剤を大量に投与する必要性も生じるものの、総じて第3世代セフェム系への依存が強すぎる」旨述べていることからすれば、第3世代セフェム系抗生剤を投与することが当時の臨床医学においては一般的であった
・被上告人側の医師による鑑定意見書においては、C医師が呼吸器感染を疑ってエポセリンを投与したこと、緑のう菌対策としてスルペラゾンを投与したことも妥当だとしている
・鑑定人の鑑定書においては、エポセリンやスルペラゾンの投与について触れられていないが、抗生剤の投与全体の中で特に問題があったとはしていない
(2) バンコマイシン投与の遅れについて
鑑定人の鑑定書には、2月1日ころにバンコマイシンを投与していれば、もっと早くMRSAが消失していた可能性があるとする部分がある。しかし、同鑑定書は一方で、MRSA保菌者に対する安易なバンコマイシンの使用は、バンコマイシンに対する耐性菌を生み出すという深刻な問題を有すること、C医師らのミノマイシン、バクタの投与によっても時間はかかったがMRSAの消失という臨床経過は見られることから、同処置が不適切であったとまでは判断できないとしている
(3)多種類の抗生剤の投与について
上告人側の意見書には、実情としては多種類の抗生剤を投与することが当時の医療現場において一般的であったとしており、鑑定人の鑑定書もこれを問題としていない。また、被上告人側の意見書も抗生剤の投与を全体として当時の医療レベルで許容範囲内であったとしている