Xの症状固定時からの余命期間を20年と想定
裁判所は、(1)Xの糖尿病の症状について、単に糖尿病に罹患しているのみならず、その3大合併症をいずれも併発していたこと(Xの余命に血糖コントロール状況の良否が及ぼす影響が大きいこと)、被告病院に入院するまではXに過食の改善が見られず、HbA1cも8・0%以上がつづいていた、すなわち血糖コントロールが「不可」の領域であったこと(ただし、その後「優」の領域に戻っている)、(2)昭和56年から平成2年までの10年間の糖尿病性腎症患者の予後に関する報告や米国人を対象とする糖尿病患者の余命に関する最近の報告内容、(3)糖尿病性腎症患者の予後が改善しつつあること、そのほかいっさいの事情を考慮して、症状固定時(54歳)からの余命期間を20年と想定してXの将来の付添看護費用を算定し(3638万円余)、また、67歳までは専業主婦として家事労働に従事することが可能であったことを前提とし、Xの逸失利益を算定する(3289万円余)ことが相当であると判断した。