1 結石嵌頓の原因
判決は、「経胆のう管以外の方法で除去できなかった原因について、丁山医師は、経胆のう管法の実施中に結石を押し込めてしまうとともに、胆管内の壁に浮腫が生じ、結石の嵌頓により、その他の結石処理法が成功しなかった旨を証言しており、これらの証言は、入院診療録中の経過表の記載と照らし合わせても、信用し得るものである。」とする。
「したがって、本件外科手術においては、経胆のう管法によって総胆管内の結石を除去することができず、むしろ嵌頓させてしまったため、最終的に結石の除去に成功しなかったものと認められる。」と結石の除去に成功しなかった原因を認定した。
2 結石除去ができないのは稀
判決は、「経胆のう管法は、これを総胆管結石手術における第一選択とする病院も存在する一般的な手法であること、松田意見書及び長原意見書がいずれも総胆管切開手法まで行って結石除去ができないのは稀と指摘し、丁山医師自身、自己の経験において同様の結果に陥った症例は1例もなく、最終的に結石除去を断念せざるを得ない事態は想定していなかった旨証言している(中略)手術そのものの困難さなどによるやむを得ない結果であるとは想定し難い。」と判示した。
3 操作上の誤りを推認
そして、判決は、「結石を取り出す操作に手間取り、手術自体が通常より長時間かかったこと、手術操作により粘膜面を刺激することになり、長く刺激するほど浮腫は出やすくなること、結石を押し込めてしまったことと浮腫が合わさって結石が抜けなくなっことをそれぞれ証言し、他方、なぜ操作に手間取ったかについては、「…うまく取れなかったとしか言いようがないです。」と答えるのみで、何らその原因の説明ができていない。」こと等から、「結石の把持が困難であったことについて、その他の原因の存在が認められない限り、本件外科手術における結石の嵌頓は、経胆のう管法の実施中における丁山医師の操作上の誤りに起因すると推認し得るものである。」と判示した。
4 事実認定
判決は、前記推認を前提に、被告の反証について検討し、次のとおり判示した。
「そして、被告において、そのような原因関係につき具体的な主張立証を一切せず、また、丁山医師からも説明がされない状況からすれば、具体的な態様を特定することはできないものの、丁山医師において、操作上の誤りにより、総胆管結石を総胆管下部に嵌頓させてしまい、その結果として本件外科手術が失敗したものというほかない。」と認定した。