E医師の説明義務違反を認める
裁判所はC大学に、Pの妻に対して約6000万円と、これに対する6年(死亡から判決までの期間)分の遅延損害金約1800万円、合計約7800万円を支払うよう命じた。
争点については、以下のとおり判断した。E医師が入院を勧めたのに、Pがこれを拒否したのはそのとおりである。しかし、この拒否は、Pが自分の病状を誤解していたことによる。 E医師は、Pが誤解にもとづいて入院を拒否していることを容易に察知できたはずであり、E医師は、正確に病状を説明したうえで、とにかくPの入院を実現させるために、もっと強く、もっと工夫をした説得を遅くとも8月5日までにすべきだった。
たとえば、8月に夏休みをとって、その際に一時的にでも入院することを提案し、とにかく入院させたうえで検査を実施し、その結果を示すなどして、入院の継続を説得するなどの方法があったはずである。
また、入院精査についても、単に、抽象的に入院精査の必要があると告げただけで入院の期間を示すこともなかった。E医師は、事態を紹介医であるB医師やPの妻に告げて、Pの誤解を解くための協力を求めることもしなかった。
これらによると、E医師は、Pの誤解を解くために適切な説明をする義務を果たさなかったと言うべきである。しかもE医師は、8月26日に最終的には経過観察をするとして診療を終えているが、これはPの誤解を助長する積極的な過失行為だった。E医師は、Pに対して、自分の方針に従うか、転医をするかの選択を求めるべきだった。それをせずに漫然と経過観察をつづけることは、患者の誤解を助長するものであると言える。
E医師が適切な説明・説得をしていれば、Pは入院、さらには弁置換手術に応じていたはずであり、その場合、9月2日にPが死亡することはなかった蓋然性が大きい。したがってC大学には損害賠償責任がある。
C大学は控訴した。