本件では、阻血徴候の発生が午前2時から4時の間と認定されました。このような時間帯にも阻血は起きますし、シーネによってもコンパートメント症候群は起きます。シーネによるコンパートメント症候群は少ないですが、報告例があります。
シーネではコンパートメント症候群が起きないという医療スタッフの思い込みが、本件事故を発生させたと思います。
コンパートメント症候群のように緊急に対応しないと重大な結果を生じ得る疾患については、頻度が少ないからといって、その可能性を無視することはできません。シーネでも包帯による外固定を行う以上、常に発症の危険があることは、医療スタッフ全員が肝に銘じておくべきでしょう。
成書がいわゆるゴールデンタイムとして記載する時間は、完全虚血であっても筋膜切開手術を実施することで予後良好となる時間です。臨床上多い不完全虚血状態であれば、その時間を過ぎても筋膜切開手術施行による機能回復が期待できますので、諦めずにできるだけ早期に対応しましょう。