── 創刊から25年の間で医師のキャリアにも変化があったと思います。
『DOCTOR’S MAGAZINE』が創刊された当初、私は編集には携わっておらず、エージェントとしてキャリアに悩まれている多くの先生方と接していました。当時は大学医局の権威が強く、先生方は山崎豊子氏の描いた「白い巨塔」の世界を引きずっている印象がありました。
そうした医療界が大きく変わる最大の転機となったのは、2004年に始まった初期臨床研修制度です。これによって研修先も専門科目の選択も、大学医局に入るか入らないかも自由に選べるようになりました。
制度が始まって20年経った現在では、多様性のある働き方が“当たり前”の時代です。キャリアの選択肢はとても増えて、起業家として活躍する医師も珍しくありません。創刊から25年の間に、医師のキャリアはめまぐるしく変化しましたよね。
── 医師の“働き方”も大きく変わりました。
『DOCTOR’S MAGAZINE』の取材でたくさんの先生方の話を聞いていると、今の時代は一昔前とは全く異なる世界の話に聞こえるほど、働き方も大きく変化しています。
現在は救急の先生でもしっかり休みが取れる勤務先が増えていますし、子育て中であっても、医師を続けるか辞めるかという選択肢ではなく、時短勤務など柔軟な働き方で仕事と子育てを両立しやすくなったと思います。
民間医局への転職相談でも、男性医師から「育児のために週休3日の常勤先を探してください」といったご要望もあります。以前は考えられなかったことです。
── キャリアや働き方の変化に伴い、『DOCTOR’S MAGAZINE』のコンテンツも変化しているのでしょうか。
はい。2018年に新専門医制度が導入され、2024年4月からは医師の働き方改革も施行されました。現在は女性医師の割合も増えており、2023年には医学部医学科に入学した女子学生が4割を超えています。
『DOCTOR’S MAGAZINE』でも、特集記事として新専門医制度や医師の働き方改革を取り上げたり、研修医による座談会、地域医療で活躍する若手医師、多様化する女性医師といった特集を組んだりと、医療制度の変化や時流に合わせて進化させています。
『DOCTOR’S MAGAZINE』を通して、現在とこれからの時代におけるキャリアのモデルケースを多くの先生方に知っていただきたいですね。
── 編集長がエージェント時代に大切にしていたことは何でしょうか。また、エージェントとして大事な資質な何だと思われますか。
私はエージェント時代に2つのことを大切にしていました。先生の本音や考えをしっかり“聞く”こと、そして一人ひとりの先生にとってベストなキャリアを“本気で考える”ことです。この2つは先生との信頼関係を築くために欠かせません。
先生や医療機関から感謝されることは、エージェントとしてこれ以上ない喜びです。それを大きなやりがいとして、昔も今も、民間医局のエージェントは日々、実直な姿勢で先生方や医療機関と向き合っています。