宿日直許可とは?
医師がアルバイト選びで知っておきたいポイントとよくある質問【働き方改革】

公開日:2024/07/18

宿日直許可とは?医師がアルバイト選びで知っておきたいポイントとよくある質問【働き方改革】

宿日直許可とは、労働密度が低く十分な休息を取れる宿日直(いわゆる寝当直等)に対して労働基準監督署長が出すものです。宿日直許可のある業務を医師が行う場合、その時間は労働時間としてカウントされません。

2024年4月施行の「医師の働き方改革」に合わせ、宿日直許可を取得する医療機関・診療科が急増しました。
人材紹介会社である民間医局にも、「常勤先から個人的なアルバイトに関する聞き取りがあった」「これまでのように当直アルバイトを申し込んで大丈夫?」といった不安の声が先生方から寄せられています。

そこで本記事ではアルバイトをお考えの先生に向け、宿日直許可でおさえておきたいポイントやよくある質問を解説します。

キャリアに関するお悩みやご相談はこちらから

宿日直許可とは

宿日直許可とは

2024年4月に始まった「医師の働き方改革」では、医師の労働環境改善のため時間外・休日労働に上限規制が設けられました。病院等で診療を行う勤務医は原則として月100時間未満/年960時間が上限となります(A水準)。

この上限規制は常勤先だけでなく、医局派遣の外勤先や個人的なアルバイトでの労働時間も含まれます。そのため医師がアルバイトをする際は、時間外・休日労働時間が上限を超えないように調整する必要が出てきました。

しかし宿日直許可を得ている業務であれば労働時間に換算されず、上限規制に影響しません。宿日直の勤務時間は休息時間とみなされ、勤務間インターバルが確保できます。

「医師の働き方改革」における時間外・休日労働時間の上限には、5つの水準が設定されています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

【医師の働き方改革】2024年4月からのアルバイト、どうすればいい?わかりやすく解説

宿直・日直・当直・日当直・夜勤の違い

労働基準法では夜間に待機することを「宿直」といい、「宿直」または「日直」を当番制で行うことを「当直」と言います。
それぞれの違いを見ておきましょう。

宿直

一般的に外来診療を行っていない時間帯に、医師が入院患者の急変に対処するため医療機関内に泊まり込みで待機すること。
待機時間も一般的には労働基準法上の労働時間に該当し、法定時間外の勤務とされる。

日直

土日や祝日など、休日の日中に医療機関内に待機すること。

当直

当番制で、宿直または日直業務を担当すること。

日当直

日直と宿直を連続して行うこと。
(例:土曜日の昼から日直→泊まり込み→翌朝、勤務終了)

夜勤

夜間に通常勤務と同様の業務を行うこと。宿直とは異なり、法定労働時間内の勤務とされる。

そもそも医療法第16条において、「病院は医師を宿直させなければならない」とされています。そのため、医師を宿直・日直させることに対して宿日直許可の有無は関係しません。

第十六条 医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない。ただし、当該病院の医師が当該病院に隣接した場所に待機する場合その他当該病院の入院患者の病状が急変した場合においても当該病院の医師が速やかに診療を行う体制が確保されている場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。 引用:e-GOV法令検索「医療法(昭和二十三年法律第二百五号)」

宿日直許可における宿直は、夜間に十分睡眠が取れることが前提

宿日直許可における宿直は、夜間に十分睡眠が取れることが前提

医療機関が宿日直許可を得るには、「一般的な許可基準」と「医師、看護師等の宿日直許可基準」の両方をクリアしなければなりません。

厚生労働省の通達「医師、看護師等の宿日直許可基準について」には、医師の宿日直許可の要件が次のように記載されています。

1 医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、規則第23条の許可(以下「宿日直の許可」という。)を与えるよう取り扱うこと。

(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。すなわち、通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから、その間の勤務については、宿日直の許可の対象とはならないものであること。

(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば、次に掲げる業務等をいい、下記2に掲げるような通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。

・ 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
・ 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
・ 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
・ 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと

(3)上記(1)(2)以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。

引用:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」

「宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るもの」とあるように、いわゆる寝当直が宿日直許可の大前提です。ところが「通常と同じような業務だった」「ほとんど寝られなかった」という事例も散見されます。

そこで厚生労働省は宿日直許可を取得した医療機関に対し、宿日直許可の内容と実態の確認、宿日直業務時の勤務環境改善を進める呼びかけをしています。(参照:厚生労働省「宿日直許可取得後の適切な労務管理のために」

宿日直許可あり・なしによる、アルバイト勤務の違い

宿日直許可あり・なしによる、アルバイト勤務の違い

ここからは宿日直のアルバイトをお考えの先生へ、アルバイト選びのポイントを説明します。

医師が宿日直業務を行う場合、宿日直許可の有無によって業務内容・賃金・勤務回数などが異なります。

宿日直許可あり

  • 労働時間に該当せず、上限規制の対象外
    (ただし救急対応など、通常勤務に近い労働が必要な場合は時間外労働として計上され、上限規制の対象になる)
  • 同一医療機関では原則、「宿直は週1回、日直は月1回」まで
  • 賃金は日勤賃金の1/3以上

宿日直許可なし

  • 労働時間に該当し、上限規制の対象
  • 勤務回数の制限なし
  • 通常賃金に加え、割増賃金が支払われる

医師が複数の医療機関で勤務する場合、たとえ個人的に行うアルバイトであっても、常勤先は医師の労働時間をすべて把握・管理する必要があります。医師もまた、アルバイト先の労働時間を常勤先へ自己申告しなければなりません。

民間医局のマイページでは、2024年4月1日以降に勤務したアルバイト(※)の労働時間・宿日直許可時間・休息時間を確認できます。常勤先への自己申告にお役立てください。
※民間医局を利用して勤務した定期非常勤・スポット求人のみ

なお、宿日直許可は医療機関単位だけではなく、診療科・職種・時間帯・業務の種類等を限定して得ることもできます。

そのためアルバイトをお探しの際は、「医療機関が宿日直許可を得ているか」だけでなく、「勤務時間や勤務内容が宿日直許可の範囲内か」を確認しましょう。

宿日直許可ありのアルバイトに関するよくある質問

「宿日直許可ありのアルバイト」に関する、よくある質問をQ&A形式でご紹介します。

宿日直許可があるのに、通常勤務と同じくらい忙しかった場合は?

Q. 宿日直許可のある求人でアルバイトをしましたが、勤務時間の大半が救急対応に追われ、ほとんど寝られませんでした。この場合、もともと提示されていた給与額と変わらないのでしょうか?

女性のエージェントアイコン

A. 宿日直許可を受けた勤務時間のうち、「日勤対応と同様の業務に従事した時間」が労働時間に該当します。そのため医療機関は、割増賃金を含めた通常労働時間と同等の賃金を支払う必要があります。

宿日直許可取得済みの医療機関の求人は、すべて許可がある?

Q. 宿日直許可を取得している医療機関の宿日直は、すべて「宿日直許可ありの求人」と思って大丈夫ですか?

女性のエージェントアイコン

A. その医療機関が宿日直許可を取得しているからといって、すべての求人が「宿日直許可あり」とは限りません。
宿日直許可を取得した医療機関でも、勤務日や勤務内容・時間帯などによって、宿日直許可が適用されない求人があります。

たとえば夜間輪番制を採用する医療機関では、輪番日の当直は「宿日直許可なし」ですが、輪番日以外の当直では「宿日直許可あり」となることもあります。

民間医局では、求人情報の詳細ページに「宿日直許可を得ている時間」と「その求人での労働時間」を記載しています。内容をご確認ください。

スポット求人の詳細ページ例

どの医療機関も勤務回数の上限は同じ?

Q. 宿日直許可取得済みの医療機関では、勤務回数の上限があると聞きました。すべての医療機関が同じですか?

女性のエージェントアイコン

A. 「一般的な宿日直許可の基準」において、原則、一人の医師が勤務できるのは「宿直週1回、日直月1回」と定められています。

ただし、地域によって例外もあります。
医師不足の地域にある医療機関ではいわゆる連直体制のため、遠方から非常勤の医師を確保する実態があります。それを踏まえ、宿直週2回や日直月2回といった例外が認められている場合もあるようです。

複数の医療機関で宿直できる?

Q. 宿日直許可を取得済みなら、複数の医療機関で宿直はできますか?

女性のエージェントアイコン

A. 医療機関(Xとする)が宿日直許可を取得するには、医療機関Xでの勤務体制・内容が一定の基準を満たす必要があります。「当直=週1回、日直=月1回」という回数制限も、その基準の一つですが、あくまで医療機関Xだけでの制限です。

複数の医療機関にまたがる勤務回数の上限は設けられていませんので、極端な例では、1週間毎日、別の病院で宿直することも可能だと考えられます。

宿日直許可ありの割合はどれくらい?2024年4月のスポットアルバイト求人で見る

ここまで、宿日直許可の要件やアルバイト選びでおさえておきたいポイントについて説明しました。

ではアルバイト求人全体のうち、宿日直許可を取得済みの求人はどれくらいあるのでしょうか?民間医局のスポットアルバイト求人データを見てみました。

2024年4月に民間医局が医療機関からお預かりした当直(宿直)スポットアルバイト求人全件を100%とし、そのうち、「宿日直許可あり」の求人は68%、「宿日直許可なし」の求人は32%でした。

日当直のスポットアルバイト求人も「宿日直許可あり」は70%、「宿日直許可なし」は30%という結果で、当直と同様に「宿日直許可あり」の割合が多くなっています。

当直・日当直スポット求人のうち「宿日直許可あり」の割合

前述のとおり、宿日直許可のある求人で勤務すれば、労働時間としてカウントされません。

時間外・休日労働時間の上限規制を気にせずにアルバイトをしたい方には、宿日直許可のあるアルバイトがおすすめです。

常勤先に影響しない、「宿日直許可あり」定期非常勤求人の例

スポットアルバイトはスケジュールを調整しやすいメリットがある反面、都度、求人を探したり応募したりする手間がかかります。そのためスポットではなく、「常勤先に影響しない範囲で定期非常勤をしたい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。

そこで総合病院(A水準)で週5日勤務するA先生を例に、定期非常勤の組み合わせをご紹介します。参考になさってください。

A先生の常勤先での勤務状況

適用水準 A水準(時間外・休日労働の上限は年間960時間)
勤務日数 週5日(月~金曜日)
勤務時間 8:00~17:00(休憩1時間、実労働時間8時間)
当直 毎週木曜日20:00~翌8:00(宿日直許可ありのため、労働時間は該当なしと仮定する)
残業時間 1日約2時間、月40時間程度(月40時間×12ヶ月=年間480時間)

A先生のアルバイト可能時間は?

  • 常勤先での所定労働時間:年2085.7時間…週40時間×(365日/週7日)
  • 常勤先での残業時間:年480時間
  • 宿日直勤務での労働時間:年0時間


アルバイト可能時間(目安):月40時間、年480時間

A先生におすすめの定期非常勤求人①

  • 毎週金曜日18:00~翌9:00の当直勤務(宿日直許可あり)、1年契約
  • この勤務の労働時間:宿日直許可があるため、労働時間は該当なしと仮定
  • 常勤先を含めた時間外・休日労働時間:常勤先の残業時間のみ、年間480時間

A先生におすすめの定期非常勤求人②

  • 月2回土曜日9:00~13:00(4時間)の健診勤務(宿日直許可なし)、1年契約
  • この勤務の労働時間:4時間×月2回×12ヶ月=年間96時間
  • 常勤先を含めた時間外・休日労働時間:常勤先の残業時間年480時間+アルバイトの労働年間96時間=年間576時間

アルバイトで不安や疑問があれば、人材紹介会社に相談を

アルバイトで不安や疑問があれば、人材紹介会社に相談を

「医師の働き方改革」が始まって数ヶ月。その名の通り、医師の長時間労働を減らすための取り組みですが、医療現場にはさまざまな混乱が押し寄せています。

医師がアルバイトをする場合も、以下のことが求められます。

  • 時間外労働の上限規制を守る
  • 常勤先に時間外労働時間を自己申告する

とはいえ日々の業務に追われ、「自分のアルバイト可能時間や、勤務間インターバルがよくわからない」という方も少なくないでしょう。そうした時は、人材紹介会社に尋ねてみるのがおすすめです。

大学医局所属からフリーランスの先生まで、多数のアルバイト紹介実績がある民間医局では、働き方改革施行に合わせて以下のような取り組みを行っています。

求人紹介前にエージェントが先生と面談

「常勤先以外での労働時間をどのように管理されているか」
「常勤先でアルバイトが制限されていないか」
といった状況を伺います。

必要に応じてエージェントがアドバイスし、最適な求人をご紹介します。

民間医局のマイページで、勤務実績が確認できる

シミュレーターを使って、アルバイト可能時間をチェックできる

アルバイト可能時間をシミュレーションしてみる※民間医局コネクトへリンクします

さらに揺れ動く時代のなかで、アルバイトだけでなく転職についても「働き方やキャリアプランそのものを見直したい」といったお考えが出てくるかもしれません。
転職するかどうか決意する前の段階でも構いませんので、何かお困りごとや不明点があればお気軽に民間医局へご相談ください。

高額給与・好条件求人の
多くは非公開です

アルバイト探しは、
情報量とマッチング力が自慢の
民間医局にお任せください