けが後の練習や試合出場 的確なケアと信頼関係が大事
スポーツドクターには、アスリートに対し、一般の患者とは異なる治療やアドバイスを行うことが求められる。例えば、アスリートがけがや病気をした際には「練習や競技を続けられること」を第一に考えたサポートを行う。トップアスリートとなれば、けがや病気でも練習を休みたくはないからだ。しかし、そうした気持ちも理解しながら、場合によっては運動を休ませる判断も必要となる。
「母校で水球のコーチをしているのですが、部員が寒いプールで足がつって、翌日も痛みがあるということで病院に行ったら、軽度の肉離れだから休むように言われました。でもスポーツドクターの視点は違う。けがの原因は運動不足にあり、部活を長期間休めば、今後、肉離れを繰り返してしまう。そういった場合には、肉離れに影響しない範囲での練習を考えます」
一方で、運動を完全に休止しなければならない時もある。
「目をけがして前房出血を起こした場合は、体は元気なので運動ができると思われがちですが、血圧の上昇が眼球内部の出血原因となるため、休まなければなりません」
こうした判断は、競技の成績や試合の勝敗にも大きな影響を与えるため、自分の判断を信用してもらうために選手や監督との信頼関係を築いておくことも非常に重要となる。
「水球は試合中に接触によって出血することもあります。通常であれば、選手を交代させますが、私なら急いで傷を縫って止血し、監督に『出られます』と進言します。水球のような激しいスポーツでは、選手一人が抜けるのは大打撃となるからです。その時に『このドクターが言うなら大丈夫』と思ってもらえる信頼関係が大事です」
なお、遠藤氏自身もトライアスロンの競技者として、日本トライアスロン連合の年代別ポイントランキングにおいて2015年は年間総合3位、2018年は総合2位という実績を持つ。自身もアスリートであることは、スポーツドクターとして大きな武器になっている。
「トライアスロンをしていると、陸上、水泳、自転車と幅広い競技に詳しくなります。自分もアスリートなので選手の気持ちも理解できますし、スポーツドクターとしての信頼や説得力も増すんです」