アイデアマンの力を発揮 全方向良しで医局を活性化
4年間の留学を終え、2009年に東京女子医科大学循環器内科の助教として帰国。若くして留学したため、10年近いキャリアがあるにもかかわらず、カテーテル治療の経験数はゼロに等しかった。
そこで、国内有数のカテーテル治療実績がある豊橋ハートセンターへ武者修行に出る。研ぎ澄まされた術者の手技から、何を考え、どう判断し、手を動かしているのかを徹底的に学び、実践した。
翌年には西新井ハートセンター病院に着任。循環器内科医が3人ほどという、小規模体制の病院であったが、重城氏いわく、少人数で規模が小さいということは、裏を返せば自分の裁量が大きいということ。手技を思う存分に研鑽するためにプラスに働いたという。
カテーテル治療医として後発だったからこその強みもある。それはカテーテル治療だけではなく、罹患者が増えている心不全をはじめとした、あらゆる心臓血管病を幅広く研究対象にするべきだという俯瞰した視点が養われたことだ。
実際、重城氏の研究テーマは、フレイル・サルコペニア・社会的孤立のような、非循環器的要素と心不全との関係をはじめ、インターベンションから薬物治療、さらには生活習慣・社会医学までを網羅し、循環器内科を総合的に捉える幅広さがある。
西新井ハートセンターで約4年半を過ごした後、再び東京女子医科大学へ。診療・教育・研究に携わり、多くの信頼できる仲間を得た。
その後、2022年4月にカテーテル治療の強化を目的として埼玉医科大学総合医療センターに招聘され、心臓内科准教授に就任。翌年10月には教授に昇任した。
就任してまず取り組んだのが、人材の確保だ。当時の医局は数年入局者がおらず、人員不足に陥っていた。そのため近隣の医療機関からの紹介依頼にも十分に応えられない状況が続いていた。人員が増えれば、治療の拡大と同時に、個人の業務のノルマを最小限にすることも可能だ。医局員それぞれが学びたいことに没頭できる環境がつくれる。
「循環器内科はハードなイメージから避けられることもありますが、僕たちにしかできない形で人を助けることのできる魅力的な診療科で、潜在的な志望者は多いはず。着任後の1年間は人材確保に全力を注ぎました」
人材確保のために取り組んだことは多岐にわたるが、一貫して大事にしているのは一人一人の話を深く聞くこと。これは鶴見氏の教えである。コミュニケーションを活発に、楽しい雰囲気をつくる。そして「何でも挑戦してみる」という風土を育てることが大事だと言う。
例えば、重城氏のアイデアマンとしての力が発揮されたものとして、地元の川越まつりへの出展がある。
出展ブースでは地域住民の血圧測定を行った。手首式、上腕式、手動式の3種類の血圧計で測定し、その差異を記録。血圧が高めの人には近隣の医療機関名が入ったうちわを配布し、行政には地域住民の健康データをフィードバック。さらに自分たちは、血圧計の種類による数値の違いを論文としてまとめ、近く公表を予定している。地域や行政、医療機関の全ての関係者にとってメリットがある、“全方向良し”の取り組みである。
楽しく、自由な発想による教育の充実で徐々に医局に医師が集まってきた。重城氏が教授に就任した翌年の2024年に6人、2025年には5人の入局者を迎え、若手医師も増加した。